WATALIS

着物地に乗せて、“ありがとう”を伝える伝統アイテム

かつて養蚕(ようさん)の街として栄えた宮城県亘理(わたり)町。着物地を使った小物アイテムブランド「WATALIS(ワタリス)」の代表・引地恵さんは、この町で生まれ育った。

「私が『WATALIS』を立ち上げたのは、地元の文化を自分の生き方に重ね合わせながら、亘理町の魅力を発信したいと思ったからです」

ブランドを始めた目的は、現在も看板商品である『FUGURO(ふぐろ)』に込められた亘理町の“返礼文化”を、広く国内だけでなく、国外へも届けたいと考えたからだ。

そんな同ブランド誕生のきっかけは、東日本大震災だった。

「震災の影響で亘理町の半分は浸水し、農業や漁業など、第一次産業が壊滅的な被害を受けました」

引地さんは当時、亘理町の職員として勤務。社会教育主事・学芸員として、地域づくりや民俗調査に関わっていた。

「亘理町で暮らす人々の生活を記録するため、震災前から続けていた民俗調査を震災の半年後から再開しました。そのとき、ある農家で着物地の巾着袋『ふぐろ』に出会ったんです」

その昔、中に一升の米を入れ、お礼として手渡されていた「ふぐろ」。この地域では当時、感謝の印として“当たり前に”使われていたものだという。

「そのことを知ったとき、この町には“ありがとう”を伝える文化が根付いていたことに気付きました。同時にふぐろは、亘理の人々の温かさを象徴しているアイテムだと思いました。その存在を広く伝えることで、亘理町の魅力を多くの人に伝えることができるのではないかと考えました」

亘理町の職員として、資料館にふぐろを展示することはできる。しかしそれでは、限られた人しか触れることはできない。どうすれば、もっと多くの人に知ってもらえるか考えていたとき、町の呉服店から「近い内に店を取り壊す」と連絡が入った。

「店を訪れると、そこにはたくさんの着物地がありました。その山を見たときに、『この着物地を使って、自分でふぐろを作ってみよう』と思ったんです」

こうして引地さんは仕事と並行して、「ふぐろ作り」をスタート。創業メンバーは引地さんの他に、妹と高校時代の友人の3人。週に1回、自宅に集い、作業を進めた。

「モノ作りの経験がなかったため、最初は地元の和裁・洋裁の先生のところへ通い、技術を学ぶところから始めました」

しかし、ただ作るだけでは「ふぐろ」を広めることにはならない。多くの人に届けるためには、販売することがいちばんの近道だと引地さんは考えた。

「私は父が亡くなったとき、もっとたくさん“ありがとう”を言っておけばよかったと思ったんです。だから普段は照れ臭くてなかなか言えない“ありがとう”を、『ふぐろ』という商品を使って、多くの人に届けてほしいと思いました」

商品作りには、地元の女性たちにも協力をお願いした。当時、復興需要で力仕事の募集が多く、男性に職はあったが、女性向けの求人は少なかった。

「女性が活躍できる場を作りたいと思ったんです。地元で働くことができれば、また地震が起きてもすぐに自宅に帰れる。子どもを持つ女性にとっては、それは非常に重要なことでした」

こうして商品の準備も整い、ついに「FUGURO」の販売を開始すると、すぐにメディアでも取り上げられ、大きな話題となった。

「当時は、商品を作れば、すぐに売れるような状態でした。ですが同時に、手に取ってくれた方に満足してもらえなければ、そこで終わってしまうという危機感も抱いていました。ですから発売後も、クオリティを高める努力を続けました」

WATALISの商品は、着物をほどき、洗い、アイロンをかけて生地にするところから始まる。その後、生地のコンディションの目視によるチェックを経て縫製し、FUGUROや名刺入れなどのアイテムになるが、その過程はすべて手作業で行われる。また検品、チェックも厳しく行い、使い手が気付かないような部分にも細心の注意を払っている。

「たとえば、表と裏で違う色の布地を使う時には、その色に合わせてミシンの上糸と下糸の色を変えています。ミシンの糸調子の調節が難しく、かなり手間をかけないとキレイに見えないのですが、普通のお客さんはまず気付かないと思います。それでもその工程を採用しているのは、細部にまでこだわることが私たちのモットーだからです」

加えてWATALISでは、着物をリメイクし、再び世に送り出す「アップサイクル」を採用している。着物に新たな命を吹き込むことで、返礼文化だけでなく、“ものを最後まで大切に使い切る”という古きよき再生文化も広く伝えていきたい、という願いがそこにはある。

そうしたこだわりが功を奏し、現在6年目、昨年の売り上げは設立年の倍以上にまで拡大した。

今日までを振り返れば、決して平坦な道のりではなかった。しかし2013年には、アメリカのラグジュアリーブランド「トーマスワイルド」とコラボレーション。さらに同年、スイス屈指の時計メーカー「ジラール・ペルゴ」ともコラボレーションを実現。海外からの評価も得ながら、着実に前進してきた。

「FUGUROの着物地を使った和のデザイン、そしてその背景にあるストーリーが海外の方にも受け入れられたことは非常にうれしいです」

ちなみに、いつも何気なく目にしている着物。その柄にはすべて意味がある。

「桜は一斉に咲き誇ることから、“繁栄”。牡丹は大輪の花を咲かせることから“豪華”“幸福”などの意味があります。ありがとうの気持ちに加えて、着物の柄に込められた使う人の幸せを願う意味も、商品に乗せて一緒に届けられたらと思っています」

WATALISのアイテムを手にすると、温もりを感じることができる。それは手作業を通して込めた“ありがとう”の気持ちが、商品にまでしっかりと込められているからだろう。だから「WATALISの商品はギフトにも人気」というのも頷ける。なぜならそこには、人と人をつなぐ温かい心が詰まっているのだから。

Profile
Brand

宮城県亘理町の職員だった引地恵が立ち上げた着物地で作った小物アイテムブランド「WATALIS」。東日本大震災の発生後、“地元の返礼文化”を伝承・普及していくことを目的に設立。“日本の美しさとの出逢いを創り、幸せを世界につなぐ”をコンセプトに、手作業による丁寧なモノ作りをしている。

   


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