オトギデザインズ

“上履き”との再会から、すべてが始まった

知らない人が聞いたら、「まるでおとぎ話だ」と笑うかもしれない。だがそれを、オトギデザインズの主宰・クリエイターの森岡聡介さんは実現してみせた。

「小学生の頃からずっと、『自分は音楽家になるものだ』と思い込んでいました。しかし音楽の世界に携わる中で、もっと広く、モノ作りに関わるすべてを学びたいと考えるようになりました」

その頃からずっと、森岡さんの心にあるのは、「自分がアウトプットしたもので、世の中を温かくしたい」という想いだった。それが音楽でも、プロダクトでも、そこに込めた想いに変わりはない。

「大学ではより広い知識を得るために、舞台美術を学びました。僕は、アートの持つ力、特に心にアプローチできる部分が大好きなんです。だから、もっと多くの方が気軽に楽しめるような『アートのある生活』を提供したいという思いがありました」

もし生活に“アート”があると、日々はどうなるのだろうか?

「毎日はもっとワクワクしますし、豊かなものになります」

森岡さんはそう断言する。その思いを実現する方法として、プロダクトデザイン、という道に彼はたどり着く。目指したのは、商業とアートの間だ。

「ある日、商店街を歩いていると、上履きが目に飛び込んで来たんです。『懐かしいな』という思いと同時に沸いてきたのは、“モノなのにモノに見えない”という感覚でした。さらに上履きを目の前にして、自分の心が不思議とほっこりとするのを感じました。そのとき、大人も使える上履きがあったら、きっと心に響くプロダクトになると思ったんです」

小学生のとき、誰もが一度は使った上履きも、大人になれば“過去のもの”になる。だが、あの頃の思い出は心に残ったままだ。だからだろう、同社の大人用の上履き「いろばき」は、なぜか見ているだけで心が穏やかになり、気持ちにまで“色”を添えてくれるような優しさがある。そして、足を通すとウキウキした気分になり、その日一日が楽しくなるような予感がする。

「そもそも上履きのポテンシャルは非常に高いんです。小学生が一年中、走り回っても壊れない耐久性、足の負担を軽くするやわらかなソール、しかも丸洗いもできるなんて、こんなに便利な靴はなかなかないですよ」

優れた機能性にデザイン性をプラスしたことで、用途も多岐に渡ることになる。

「休日のお出かけシューズとして、職場でのリラックスシューズとして、またジムでのトレーニングシューズ代わりに使う方もいます。人によって、ライフスタイルによって、使い方はさまざまですね」

いまでは「いろばき」は、幅広いユーザーに愛用される、同社を代表する定番商品になった。しかし「いろばき」の生産には、大きなハードルがあった。シューズメーカー(上履き工場)から提示された最低ロットは、個人のクリエイターが作るには、あまりにも多い数量だった。

「リスクが大きすぎると、僕に賛同する人はいませんでした。誰もが『やめた方がいい』と言いました。工場の方も僕を止めたほどです。それでも僕はあの日感じた感覚を形にしたいと思いました。だから周囲に、この商品の魅力を、何度も何度も、必死に説明しました」

売れなければ破産するかもしれない――。それでも森岡さんは自分の信念を曲げることなく、生産を決断する。そうして完成した商品は、ギフトショーに出展すると、すぐさま注目を集めた。

「売れたのは、僕の力というよりも、上履きの持つ力が大きかったからです。安心感と懐かしさ。僕の思った通り、心に届くプロダクトになりました」

そう話す森岡さんの目は、キラキラとしていた。瞳には、おとぎ話に聞き入る少年のような純粋さが浮かんでいた。そのまっすぐな思いはきっと、彼の生み出すプロダクトに触れれば、しっかりと手の平から感じることができるだろう。

Profile
Brand

クリエイター森岡聡介が主宰する、ライフスタイルプロダクトを中心としたデザインレーベル「otogi designs」(オトギデザインズ)。2010年、上履きをリノベーションした「いろばき」を発売し、注目を集める。他にも「活版印刷をつかった紙のプロダクト」など、リノベーションデザインを得意としている。どれも昔から慣れ親しんだモノが、同社のフィルターを通すことで、魅力的で新しいプロダクトに生まれ変わっている。

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